葛西紀明さんの妹さん(前川久美子さん)が今月13日に、38歳でお亡くなりになりました。
前川久美子さんは、16歳のとき、「再生不良性貧血」という難病を患われました。
そのときに、余命5年を告げられますが、臍帯血移植という移植手術をします。
移植手術の甲斐あって、一時は回復しました。
しかし、その後、度重なる肺炎や副作用や合併症で、入退院を何度も繰り返すことになります。
そんな長い闘病生活で、2015年5月に意識がなくなって以来、一度も意識を戻す事はありませんでした。
今回は、久美子さんを襲ったこの「再生不良性貧血」という聞きなれない病について、その生存率・原因などをまとめましたので、ご紹介したいと思います。
目次
再生不良性貧血とは
久美子さんが患った再生不良性貧血は、赤血球・白血球・血小板といったすべての血球が減少してしまう病気です。
再生不良性貧血症の罹患率は、2004年~2012年で年間約1,000人、罹患率は約8人(/100万人年)とされています。
そのため、1972年に厚生労働省は再生不良性貧血を難病に指定しました。
スポンサーリンク
再生不良性貧血の原因
再生不良性貧血は、造血幹細胞に異常が起こり、すべての血球が減少することにより発症します。
造血幹細胞というのは、赤血球・白血球・血小板のすべての血球をつくりだすものです。
しかし、造血幹細胞が何らかの原因で障害を受けてしまうと、血球がつくられなくなってしまうのです。
再生不良性貧血の生存率
再生不良性貧血という病名、そして難病と聞くと、絶対に助からない不治の病という印象を受けるのではないでしょうか。
実際に、どれくらいの生存率があるのでしょう?
再生不良性貧血の生存率は、患者さんの年齢・治療法・生命力などによっても変わってきます。
そこで、年齢別・治療法別に生存率をまとめました。
40歳未満の生存率
(16歳未満)
◆HLA一致血縁ドナーの骨髄移植
93%
◆HLA一致非血縁ドナーの骨髄移植
90%以上
(16歳~40歳未満)
◆HLA一致血縁ドナーの骨髄移植
86~100%
◆HLA一致非血縁ドナーの骨髄移植
70%代
(20歳以上の場合)
移植治療に関連する死亡率は、10~20%です。
これは、免疫抑制療法よりも高い死亡です。
そのため、免疫抑制療法を選択することも考えられます。
◆免疫抑制療法
HLAの合う兄弟姉妹がいない場合には、免疫抑制療法が選択されます。
免疫抑制療法の場合、再発・骨髄異形成症候群・急性骨髄性白血病などのリスクなしに生存する確率は50%であるため、40歳未満はHLA一致血縁ドナー移植が優先されます。
※HLAとは、白血球の型のことです。
40歳以上の生存率
◆HLA一致同胞間骨髄移植
70%前後
再生不良性貧血の症状
再生不良性貧血を発症すると、赤血球・白血球・血小板のすべてが減少します。
そのため、赤血球、白血球、血小板が減少することによるそれぞれの症状が、同時に現れます。
具体的には・・・
◆赤血球が減少すると・・・息切れ・動悸・めまい・頭痛などの貧血症状が現れます。
◆白血球が減少すると・・・細菌に対する抵抗力が弱まり、感染症に弱くなるため、発熱などがみられます。
◆血小板が減少すると・・・皮膚に青あざができる、歯ぐき・鼻の粘膜の出血などの症状が現れます。
1)自覚症状
主要症状は労作時の息切れ・動悸・めまい、などの貧血症状と、皮下出血斑・歯肉出血・鼻出血などの出血傾向である。好中球減少の強い例では感染に伴う発熱がみられる。軽症・中等症例や、貧血の進行が遅い重症例では無症状であるため、検診でたまたま血球減少を発見されることもある。
2)他覚症状
顔面蒼白、貧血様の眼瞼結膜、皮下出血、歯肉出血などがみられる。血小板減少が高度の場合眼底出血を認めることがある。
出典元:http://www.jichi.ac.jp/usr/hema/images/download/1_1.pdf
再生不良性貧血の治療
前川久美子さんは、「臍帯血移植」(さいたいけついしょく)という移植手術をされていますが、これはどんな治療法なのでしょうか。
再生不良性貧血の治療は、区分された症状(ステージ1~ステージ5)や年齢などにより異なっています。
具体的には、「免疫抑制療法」あるいは「骨髄移植」による治療が行われることが多いです。
しかし、何らかの理由で、このいずれの治療も無効あるいは受けられない場合に考えられる治療法が、「臍帯血移植」です。
臍帯血移植とは
「臍帯血」はお母さんと赤ちゃんをつなぐ、へその緒の中に含まれている血液です。
臍帯血には「幹細胞」という、幹細胞が豊富に含まれています。
※幹細胞とは、身体のいろいろな部位の細胞をつくりだす元になるものです。
臍帯血移植のメリット
◆HLAが4/6でも良いので、ドナーがみつかる確率が高い。
※4/6・・・HLAの適合度を表すものです。
◆ドナーの負担がない
◆移植までの期間が、骨髄移植に比べて短い。
臍帯血移植のデメリット
◆感染症の可能性が、骨髄移植に比べて高い。
むやみに恐れない
「難病」に指定されているので、絶対に助からないと思われがちなこの病気。
しかし、早めに適切な治療を行えば、今回紹介した生存率を見ても、7~8割の人が輸血を必要としなくなるまで回復することができるようです。
もし、再生不良性貧血の症状(打ち身ではないのに青あざができた・めまい・発熱など)が続くようであれば、信頼できる病院を受診してくださいね。
さいごに
久美子さんの訃報の後も、葛西さんは大会出場を決められましたが、その心情は察し切れません。
久美子さんも、長い闘病生活の中で、葛西さんのスキージャンプは大変励みになったことと思います。
久美子さんのご冥福をお祈りいたします。